現代の生活ではアルコールを摂取する機会が非常に多い

 

社会人になるとお酒を飲む機会が沢山あります。はれて20歳になった時に飲むお酒の席は、とても楽しい時間を過ごす場である事も事実です。しかし、そのお酒に含まれるアルコールは、近年の研究によって様々な影響を人体に及ぼす事を知っておいた方が良いでしょう。

『適度なお酒の量は、健康には良い』というメッセージを根底から覆すことになる、これらの研究論文は是非とも一般の方にも情報を広める必要がありそうです。

人とお酒の長い歴史

 

世界最古のお酒は各論文によって色々と見解は異なりますが、その歴史は非常に古く、世界文明の黎明期から存在していたそうです。最古の調査によると、紀元前5,400年頃のイラン北部に位置するザグロス山脈、ハッジ・フィルズ・テペ遺跡から発掘された壺の中に、ワインの成分が検出されたとあります。

また、紀元前3,000年代にはメソポタミアのシュメール文明である粘土板に、現在のビールと同義のアルコールの記述が遺跡調査から発掘されています。そして、シュメール文明の後を継ぐバビロニアでは、最古の成文法のハンムラビ法典にビール売りに関しての記録が残っています。

すでにその当時から、大麦や果実を原料として試行錯誤をしながら発酵させたものを飲料として用い、その飲料はアルコール酒の原型となったようです。

その後、原料の種類の違いによって様々なアルコールのお酒が生まれる事になります。大麦からはビール、葡萄からはワイン、日本でのお米からは日本酒などなど…。アルコールにはそれだけの歴史があるのです。

日本のお酒の歴史も古く、奈良時代には製造法として確立されていました。その時代のお酒は宗教儀式の儀礼の一部であり、とても神聖なものでした。神に供える事で収穫の豊作や無病息災を祈願して、お酒を飲む事で厄を払う役割を担っていました。

朝廷や特権階級に限られていたお酒は、平安時代や鎌倉時代を経て次第に庶民の間でも一般化し、室町時代になると酒屋が屋号を持つようになりました。

このように、お酒と人類の歴史は有史以前から深い繋がりがあります。

英国の研究結果から学ぶこと

 
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)で発表された最新の研究結果は、お酒を毎日たしなむ方には衝撃を持って迎えられるかもしれません。

この研究結果は、2017年6月に英国のオックスフォード大学とロンドン大学のユニバーシティーカレッジ(UCL)から出されました。内容は、少量の飲酒でも長期の習慣によって脳はダメージを受けているという報告です。

研究を分析すると、一週間に140〜210㎖のアルコールを摂取している人は、記憶や空間認識を司る脳の重要な部分である海馬が萎縮する可能性が、ほとんど飲まない人に比較して約3倍も高い数値を示したとしています。

イギリス政府が定めているガイドラインでは、一週間の飲酒量は140㎖以内にすべきとされています。我が国の厚生労働省が定めている指標は、1日平均25㎖とされているので一週間で175㎖となります。

研究内容では、アルコール依存症ではない健康な男女550人の30年間の追跡調査が研究チームによって分析されました。最も影響が大きかったのは、週に300㎖以上摂取していたグループで、140〜210㎖の単位のグループもあまり飲まないグループに比べて海馬が萎縮する兆候は多く確認されました。

この研究結果に英王立エジンバラ病院神経精神科のキリアン・ウェルチ氏は『多くの人が普通だと思っている飲酒習慣が健康に悪影響をもたらすという主張を補強する重要なものである。私たちは何かと理由を付けて長期的には利益にならない行動にしがみつく事を正当化しがちだ。』と論説で述べています。

米国での学会は、アルコールは発がん物質と明確に認定

 
米国臨床腫瘍学会(ASCO)が2017年11月に発表した内容によると、アルコールは発がん物質と述べて飲酒を見直す提言を行っています。

『アルコールとがん』という声明によると、「アルコール飲料はいくつかの悪性腫瘍の確立した危険因子であり、がんの危険因子のうち対処可能なものである。」としています。

アルコールに起因すると推定されるがんは、口腔咽頭や喉頭癌、食道癌、肝細胞癌、乳癌、大腸癌と因果関係があると認めています。また、最大のリスクは大量、長期間の飲酒であるが、適度な飲酒でも癌のリスクが上昇する可能性があるとしています。

発がんのメカニズムについて

 

学会が発表した資料には、発癌のメカニズムにおけるアルコールの役割が説明されています。エタノールはアルコール・デヒドロゲナーゼとアルデヒド・デヒドロゲナーゼが順次触媒する生化学反応によって、最初にアセトアルデヒド、次に酢酸に酸化されて体外に排出される。

アセトアルデヒドはDNAやタンパク質に結合する事によって、発ガン性と突然変異誘発性を持つ。

さらに、現在アルコールを飲んでいない人は、どのような理由であれ飲酒しない方が良い。とまで踏み込んで提言まで行っています。

少量でもアルコールは確実に健康に影響する

 

以上のような研究結果から、アルコールが心血管系の健康に利益があるとする説は、恐らく過大評価されている可能性が高くなっています。

少ない飲酒でもガンのリスクが増加するので、全体としてのアルコールの効果は有害であると言わざるを得ません。従って、心血管疾患等を予防する目的で飲酒を推奨すべきではないと結論付けます。

飲む際は、研究結果を知った上で上手に付き合いましょう

 

しかし、そうは言っても一般社会の生活では、アルコールの入った席を全て断ることは現実的ではない場合が多いでしょう。社会人になれば新入社員や退職者の方の歓送迎会や、色々なお世話になる取引先との接待の場もあるでしょう。

数回、アルコールを飲んだだけで健康被害に直結することは考えにくいのですが、そういった席に行く回数を減らす対策や毎日の飲酒をする習慣を見直すなど、アルコールに対する意識を変えることも必要かも知れません。

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